まるごと描く

船戸与一は、「満州をまるごと描く」をコンセプトに“満州国演義”シリーズを書きました。

人類史をまるごと描くユバル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を読んでいて、ずっと試されていると感じていました。この本は、読み手の内的蓄積に呼応します。何を見て、何を聞いて、何を読んで、何を考えて生きてきたか。

読むにあたって、フランス革命と聞いて思い浮かべることがある程度には、高校の世界史レベルの知識はほしいところです。

船戸与一の諸作品や、漫画なら浦沢直樹の『MASTERキートン』や岡崎二郎の『アフター0』を思い出しながら読みました。それだけでなく、本棚に並んでいる本のすべてが、この『サピエンス全史』と密接に繋がっているようにも思えます。必ず、この本のどこかに当てはまるのです。

これまで読んできた本のおかげで『サピエンス全史』を楽しく読むことが出来たなら、その逆、『サピエンス全史』を読んだ後にそれらの本を再読したなら、また楽しめるのではないかとも思えます。

この本を読んでみようと思ったきっかけは、NHKのドキュメンタリー番組でした。興味深く見ましたが、同時に物足りなさも感じました。そこで手に取ったわけですが、その不満も吹き飛ばしてくれました。

また、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』を読んでいたことで、本書をよりいっそう楽しめたと思っていたところ、巻末の謝辞に名前があって驚くとともに嬉しくなりました。

内容について感想を書こうと思ったら、一章ごとに書いても追いつきません。ですので、この場では読んで良かったという感想を書くだけに止めます。

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福