『プレイバック』

レイモンド・チャンドラーは、従来の推理小説(探偵小説)を非現実的なパズルと評し、リアリズムを前面に立ててフィリップ・マーロウを主人公とした一連の作品を書きました。

もちろんミステリーですから、事件が起き、それを解決するプロセスが物語として描かれます。

では、謎解きを主眼としないストーリーにおいて、マーロウは何を目指しているのでしょうか。何を以て満足するのでしょうか。

『プレイバック』において、マーロウは物語の中盤で早々に依頼を果たして、お役御免になります。しかし、そこからまた事件の渦中に自分から戻って行きます。

何故か。その事件という演目の中で自分がどういう役割を果たしているのかを知りたかったからです。自分が与り知らないところで他人に記号として利用されることを潔しとしなかったのです。

その姿は『マルタの鷹』のサム・スペードと同じです。これは意外な発見でした。

プレイバック

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