昨日の読売新聞(朝刊)のコラム記事「追悼抄」で、船戸与一が取り上げられていました。
読んでいる間、周囲の喧騒が消えました。
“満州国演義”シリーズに登場する敷島次郎は、日本から満州に渡って馬賊の頭目になり、「柳絮の如く」生きることを旨としていました。
柳絮は風に運ばれて飛びます。
その、柳絮を運ぶ風のような人だったのだな。
風は吹き過ぎ、舞台を去るのが“硬派の宿命”。そして、後には物語だけが残る。
作家自身が、船戸ハードボイルドで描かれる“硬派”そのものではないですか。
『猛き箱舟』の香坂のように、その眠りが安らかならんことを。