『その女アレックス』

『その女アレックス』は、いろいろな賞を受賞し、各種ランキングでも一位に選ばれるなど、読めば面白いとわかっていましたが、作品そのものよりも、それら枝葉の賑わいに売る側の思惑が透けて見えて鼻白み、意識的に距離を置いていました。

それを手に取ったのは、まあちょっとしたきっかけがあったからですが、それは関係ないこと。

この物語は、焦点となる女性アレックスのストーリーであると同時に、誘拐事件を追う刑事のドラマでもあります。

読者を翻弄する展開を支えているのは、この刑事の再生の物語です。これがあってこそ、『その女アレックス』は成立します。

「真実より正義」

物語の最後に出てくる言葉です。

この世の「正しい」のほとんどは「間違っていない」の言い換えに過ぎません。その正しさは、真実と同義でしょうか、正義と同義でしょうか。

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)