糧として

「成長する」とは、如何なる姿を指すのでしょうか。

高校生の成長を描いた小説ですから、それに資する人物が主人公の前に現れ、その出会いによって物語がさらに高みへと進んでいくのは当然です。

その一つひとつのエピソードが、クリアすべきステージのようなものではなく、その時々に主人公が乗り越えるべきモノとして描かれています。

挫折や葛藤はあっても、無駄なくストーリーは進んで行き、「上手く行き過ぎ」という側面はあります。しかし、そう考えるのは重箱の隅を突くようなもので、マイナス要素ではありません。

それは何故か。

第一に、この作品は架空の国を舞台にしていますが、その枠組みや骨格が(作者の考えが行き渡って)緻密かつ強固で、そこで描かれる物語に説得力があるから。

第二に、主人公の高校生が、その出会い、その出来事を“糧として”前に進もうと自覚しているから。

この「他人は誰もが師。そこから何を学ぶかは自分次第」という姿勢が素晴らしい。

真っ直ぐ過ぎるくらい真っ直ぐなビルドゥングスロマンです。