古本

二年前の春に家の中の不要なものを大量に処分し、そこには文芸雑誌も多く含まれていましたが、ハードカバーの文芸書や文庫は残していました。

当人の了解のもと、本当に必要なものだけを残し、不要な本をごっそりとチェーンの古書店に持って行きました。その数、300冊以上。

大半が焼けて紙が茶色になった文庫本ということもあり、引き取ってもらえれば御の字のつもりでいましたが、豈図らんや、それらに値がついて予想もしていなかった金額になろうとは。

買い取り不可の本もたくさんありましたが、それは承知のうえ。それを差し引いて、どうして想像もしていなかった金額になったのか疑問に思い、その理由を尋ねてみました。

その説明によると、文庫本が入手困難のため品薄で、入荷すれば間違いなく売れるので、店側としてもありがたかったとのこと。わたしとしては経年劣化を気にしていましたが、それもマイナス要素にはならないという話でした。

持ち込んだ本のほとんどが新刊書店の棚には並んでいないものなので、そちらの売り上げに影響を与えることもなく新たな読者の手に渡ってくれれば嬉しいと思う一方で、昨今の出版不況についても考えました。

本が古本屋に回ってこないのは、そもそも新刊で売れていないからではないでしょうか。その現象が一冊数百円の文庫本で起きていることに驚き、同時に恐ろしくなりました。

売れないことにではありません。読まれないことにです。

ちょっと待ってくれよ。そんな気分を引きずっています。