『土漠の花』1

映画『ダイ・ハード』はエポックメイキングな作品でした。それまでは、マッチョなヒーローが凶悪な敵をやっつける痛快無比な作品がアクション映画の主流でしたが、そこに、ある制限された特殊な状況下に置かれた、超人のような力を持たない主人公が創意と工夫、不屈の闘志で戦い抜くという、観客が共感を抱く人間性を付与しました。

警察官が凶悪犯に向けて銃を発砲しても、後から「拳銃の使用に違法性はなかった」というパブリックコメントが発表される国、日本。その国の自衛隊が海外で活動する際に受ける制約は、一般に伝わる以上に細かく厳しいものであろうことは容易に想像できます。

そして、人を殺すという行為。それを自らに許す、許さざるを得ない地獄。

そこで、人は“人として”生き抜くことができるのでしょうか。

登場人物は、法的なものであれ、常識的な判断というものであれ、倫理の問題であれ、誰もが葛藤を抱えて戦います。

その“制限”こそが、人を人足らしめるのであり、その姿が読者の胸に迫るのです。

土漠の花

土漠の花