『土漠の花』2
『土漠の花』は冒険小説です。その描写の眼目は登場人物たちの内省ではなく、行動です。
そのきびきびとした展開のなかで、登場人物たちは気持ちや想いを縷々語ったりはしません。そんなことに時間を費やしていては死あるのみ。
しかし、人が人であろうとするとき、心が支えになります。
大藪春彦の『野獣死すべし』の伊達邦彦は、己の物欲を満たすために他者に牙を剥いていたでしょうか。船戸与一の『猛き箱舟』の香坂は、『山猫の夏』の山猫は……。
『土漠の花』の自衛隊員たちは、仲間の意を汲み、慮ることを疎かにしません。そして、自分がすべきこと、為すべきことを遂行します。それこそが誇りです。その誇り高き姿こそが、この作品の読み応えであり、醍醐味です。
次の作品が待ち遠しい。そう思える作家です。
- 作者: 月村了衛
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2014/09/18
- メディア: 単行本
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