『ハーモニー』2

伊藤計劃の『ハーモニー』の主役は三人の女性です。彼女たちの葛藤が縦軸となって物語は進みます。

一方で、作品世界を成立させている横軸(=世界観)を作っているのは、直接には描写されることのないモブ、その他大勢の人々です。

その人たちは、与えられた社会システムを唯々諾々と受け入れ、法律で規制されていないことでも“空気を読んで”自発的に決まり事を作り、それを互いに課します。

わたしの幸せはみんなの幸せ。みんなの幸せはわたしの幸せ。こうして、優しいファシズムが進行していきます。

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)