『ハーモニー』1

アメリカでは、酒を飲む人、煙草を吸う人、太っている人は評価の対象にならないと聞いたことがあります。自分(の欲望)を管理、コントロールできない人が、仕事で他人を管理、コントロールできるはずがないから。

それは人間の意志の肯定です。我想う、故に我在り。その意志、あるいは意識はどこにあるのでしょうか。脳でしょうか、心でしょうか。

人間の身体は物質です。喜怒哀楽ですら神経物質の作用として計測可能です。脳という計算機のデジタルな入出力=意志。自分らしさなど、その揺らぎの範囲内でのこと。

そのとき、誰もがかけがえのない個人であり、一人ひとりが等しく尊い存在であるという価値観は成立するでしょうか。

「しない」という答えはあり得ません。「する」のです、「させる」のです。それが人間の業です。

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

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