ほろ苦い

完璧な人間などいません。誰もがままならない人生を持て余しています。

社会のセオリーに倣うことができずに身を持ち崩していくのではなく、まっとうに働きながら、家庭生活を営みながら、その中で、どこかバランスを取れない。

発行部数が激減して四苦八苦している新聞社を舞台に、そんな男たち女たちを描いた連作短編集です。

ドラマは日常に潜んでいます。劇的な展開はありません。それでも読ませるのは、著者の観察眼の確かさと、登場人物たちの愚かさを包み込む懐の深さの故です。

何ともほろ苦い。

これは良い小説です。

最後の紙面 (日経文芸文庫)

最後の紙面 (日経文芸文庫)