資本主義の行方

法人税が低い外国に本社を移転したり、社内で使う言葉を英語にしたりする企業の話題を見聞きして、ずっと疑問に思っていました。

この人たちは、自分を規定するとき、日本人と○○(企業名)の経営者or社員のどちらを第一義に選ぶのだろうと。

グローバル経済とは、お金の流れに国境という制約がないことです。その環境で、「国破れて山河あり」ならぬ「国破れて企業あり」は可能なのでしょうか。

経済のニュースで良い話は聞きません。局地的に好景気の話題があっても、それは限定された小さなバブルに過ぎません。

資本主義が機能不全に陥っているのではないか。その危惧を論じた本です。

自分は正しいことを言っているという押し付けがなく、冷静な論調で頷ける内容です。しかし、著者も方向性は示すところに止まり、具体的な処方箋を出すまでには至っていません。

経済は人の意思(というよりも気分)が色濃く反映されるもので、先行きは不透明です。その中で、他人を(良い方向にしろ悪い方向にしろ)煽ることのない真摯な姿勢は信頼に値します。

一つ異議を唱えるなら、著者はヨーロッパの資本主義を論じるにあたって「蒐集」という言葉を使っていますが、それは「収奪」とすべきでしょう。

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)