夢の季節

具体的な“物”ではなく“夢”を売る商売。

その売り手が二十代前半で、買い手は十代後半。ともに女性。この夢は短い期間に限定された一過性のものであるからこそ、光り輝きます。

クラッシュ・ギャルズは少女たちにとって憧れの存在ではあっても、決して仰ぎ見る女神ではありませんでした。戦う姿に自分の中の何がしかを投影して、ともに泣き、悲しみ、怒り、喜ぶ。リングにいるのは、もう一人の自分。

自分は一人ぼっちだという諦念と、自分は一人じゃないという連帯感。相反する二つの感情が奇妙に同居する、夢のような季節。

しかし、その季節が過ぎ去っても、現実は厳然として目の前にあります。

その前と後も含めた物語が訴えかけるのは、人の持つ強さと弱さ。そこには綺麗も汚いもありません。それらを含む強靭さです。