『これ誘拐だよね?』
下品でバカな連中が右往左往する物語です。それを楽しく読めるのは、著者が適度な距離を保った描写に徹して、物語自体が下品にもバカにもなっていないからです。
この作品には、見た目も言動も一般的に変人とされる人物が二人、登場します。しかし、読み進めるうちに、この二人が正常で、社会的地位もある他の多くの人物の方が変だと思えてきます。
このパラドックスに、ジャーナリストの経歴を持つ著者の反骨心が窺えます。
自然破壊や資本主義の矛盾も言及されていますが、それが声高に叫ばれるのではなく、物語に溶け込んでさり気ないのが粋です。小説はこうでなくては。
読んで楽しいということを疎かにしない、素敵な小説です。
- 作者: カールハイアセン,Carl Hiaasen,田村義進
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/01/04
- メディア: 文庫
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