『里山資本主義』

一方では「多様性が大切、自分らしい個性を持て」と煽るのに、他方では物事をたった一つの尺度で測ろうとする矛盾、二枚舌。

経済を論じるとき、最も多く使われる言葉、“GDP”。それが豊かさの指標でもなく、経済力の絶対値でもないと言われて首を傾げた方にぜひ読んで欲しい本です。

都市の肥大化と、それを支えるための(人も含めた)資源の供給源としての田舎という一方通行の関係が機能しなくなってきています。そして、実体経済をはるかに凌駕する規模の投機マネーの暴風雨。

その“マネー資本主義”に対する“里山資本主義”。GDPだけでは語れない、評価できない人の世の営みを見つめなおすことの大切さを説きます。

逆境を逆手にとって具体的なアクションを起こした人たちの話は、どれも興味深く、マイナスとしか思えなかったことが発想の転換でプラスに転じるストーリーの数々はミステリーのように読んで楽しいものです。

日本の経済的な立ち位置が、巷間言われているほど駄目ではないことを具体的な数字で論じて、現状を全否定して自分たちの論の正しさを強調することもなく、公平なスタンスで書かれてます。

常識という呪縛から解き放たれれば、世界は可能性に満ちています。