急がば回れ

この本の主張はシンプルです。

「人を育てよう」

「とりあえず目の前の利益を確保しなくては、次がない」という汲々とした世の中で、それを主張するのには勇気が要ります。“米百俵”も、そのとき持て囃されただけで終わりました。

小泉純一郎が首相だった頃、戦後二番目の好景気といわれながら、そこには“実感のない”という言葉がついていました。設備投資の額だけを指標にした“好景気”。それに何ほどの意味があったのでしょうか。

現在のアベノミクスも同様です。“株高”だけが喧伝され、それを以って日本の経済力が回復した、あるいは円安によって正当に評価されるようになったとの論調を見かけますが、財政的な動きによる株価の上下や、為替の動きだけで好不調が決まるなら、日々の努力も技術革新も必要なくなってしまうではありませんか。

帳簿上の数字の動きに過ぎない現状を担保に、消費税の税率を上げる。これを「出来レース」と呼びます。

人を育てることの難しさは、子育てをしている(過去に経験がある)人はもちろん、学生なら部活動などで、社会人なら職場で、毎日のように痛感しているはずです。そして、その場しのぎでは本質的な進歩や改善はなく、次に続かないということも。

ネットの普及を含む、グローバルと称される時代であっても、“戦略”は最も大切な基(もとい)であることは変わりません。そして、システムのために人がいるのではなく、人のためにシステムがあるということも。