積む

職場で欠員ができ、新人が入社してきましたが、二週間で「辞めたい」と言ってきました。その理由として「自分は正午になると同時にピタッと昼休みに入り、五時半になったらパッと席を立って帰るのでなければ働けない」とのことでした。

そして、「迷惑をかけないよう、月末までの残り二週間は勤めます」とは本人の弁でしたが、あまりにも適当な仕事ぶりに、私が「辞めるのは仕方ないが、出社している以上は給料が発生するのだから、もう少し丁寧に仕事にあたってほしい」と注意したところ、その翌日に「体調が悪いので休みたい」となり、翌々日には「辞めると言った後では行きにくいので、もう行かなくて良いですか」と言い出して、お終いとなりました。

自分に向かないのであれば、早々に見切りをつけること自体は否定しません。だらだらと続けても、本人にも一緒に働く側にも不幸です。

私が気になったのは、その新人が二十五歳で、これまでに派遣や契約社員での、簡単なパソコン入力業務しか経験がなかったことです。

小幡績が、その著書で大略「人的資本の蓄積という観点から、若年層の雇用の確保と質の向上が重要」と説いています。経験を積むというプロセスを経ずに年齢だけを重ねていく恐怖。個人としても、この国の将来にとっても。それを実感した出来事でした。