天邪鬼

村上春樹の新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が売れに売れています。売れるものと売れないものの二極化と云われますが、短期間で一気に売れる、その様子を眺めながら、同じ村上春樹の『ノルウェイの森』の一場面を思い出しました。

それは、主人公と寮の先輩の“永沢さん”が初めて会話を交わす場面です。永沢さんは、主人公がスコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を読んでいることに興味を持ち、自らの読書作法について語ります。

「(自分は死後三十年を経ていない作家の本は原則として手にとらない。けれど)現代文学を信用しないというわけじゃないよ。ただ俺は時の洗礼を受けてないものを読んで貴重な時間を無駄に費やしたくないんだ。人生は短い。(中略)他人と同じものを読んでいれば他人と同じ考え方しかできなくなる。そんなものは田舎者、俗物の世界だ。まともな人間はそんな恥ずかしいことはしない」

熱狂からは、ちょっと距離を置きたい。そう思う、今日この頃。