イノシシ派

何という外交下手。レーダー照射云々の事実が確認されたなら、それは取っておき、最強のカードでしょう。それを早々に晒すとは。

安倍首相から“謝罪”という言葉が出ましたが、中国共産党の指導部が自らの非を認めるはずもないことは火を見るより明らか。

自分たちが指示したと認めても地獄。現場が勝手にやったこととすれば、軍を制御下に置けないでいることを認めることになって地獄。

現在のアメリカの最恵国は中国です。と同時に、そのアメリカは中国の太平洋進出を懸念しています。日本と中国の間の問題には必ずアメリカが係わってくるのです。そして、アメリカは単独で事を起こさず、日本を含む多くの同盟国と事前の了解(=アリバイ)を用意します。

日本と中国の問題は、決して二国間で完結しないのです。

起きたことは公表しなければいけません。隠蔽など以ての外です。しかし、その前に双方が事実を確認し、「どういう形で決着させるのか」を協議することはできなかったのでしょうか。非は中国側にありますから、詰め腹を切る者も出たでしょう。「今回はこれで……」という提案も出たでしょう。そうして互いの面子が立つ形での解決を図れば、それは事件の再発防止にも繋がったのではないでしょうか。そして、何よりも、日本は今後の外交における“より強力な”カードを手にすることができたのです。

今回の事件では、どのように事を収めるべきか、日本よりも中国の方が頭を悩ませていると思います。表面上は日本を批判しても、的外れなことを言っていることは、誰よりも当人たちが承知しているはずです。そして、事は軍事に関すること、アメリカをはじめとする世界中の国が事実を確認しようと躍起になっていることは想像に難くなく、そこで確認された“事実”を単なる日本批判のポーズで誤魔化すことはできません。

タカは獲物を見つけるや襲いかかりますが、その前には大空を悠然と飛んでいます。それを忘れてひたすら直線的に動くことしかできないのであれば、安倍首相はタカ派ではなくイノシシ派でしょう。