『「東京裁判」を読む』

数字と解釈の輪舞曲。タイトルは「言い訳」。

裁判は論理の世界です。「叙事の積み重ねが叙情を凌ぐ」(by船戸与一)なら、感情論など無意味です。負けたときこそ胸を張れ。それができないのは、自身の中に確固とした信念がないからです。

大の大人が、自分がやったことを「やらされた」と言って恥じない心理が、私には理解できません。

その覚悟の無さを象徴する言葉があります。

「夢想だもせざりし」

東條英機の供述書にて、開戦から戦況が悪化し降伏に至るまで、様々な場面で出てきます。福島第一原発事故における「想定外」とピタリと重なります。

文脈を断ち切って一部だけを取り上げては本質を見誤ります。そもそも、物事は多面的であるのが当然で、意味や価値は他者との関係性において生まれます。

肯定するにしろ否定するにしろ、どちらかでも極端に振れることは思考停止と同義です。その罠に陥らないためにも勉強が必要であると痛感しました。

「東京裁判」を読む (日経ビジネス人文庫)

「東京裁判」を読む (日経ビジネス人文庫)