二つのバブル

売れる/売れている。その事実に、あらゆる言説は太刀打ちできません。

90年代のある時期、シングルCDを毎週のように発売する、複数の曲を同じ日に発売するといった現象がありました。それは、「このバンドが売れている。そのCDを買うのがトレンドの最先端なのだ」という印象を消費者に与えるイメージ戦略の一環でした。

それに対し、一部から「ファンの負担を考慮すべき」という意見が出ましたが、実際に売れているという現実の前に力を持ちませんでした。

形を変え、歴史は繰り返されます。AKB48バブル。

ブームは、一過性だからこそブーム足りえます。人気投票を“総選挙”と言い換え、新しい刺激を作り出したセンスには脱帽しますが、新しいものは、別の新しいものが現れたら「古いもの」になる運命から逃れることはできません。

私たちは、かつて別のジャンルでそれを目撃しています。大晦日に民放のテレビ局がこぞって格闘技中継をした格闘技バブルです。

不幸の種は、実は幸福の絶頂時に蒔かれます。

私が「ああ、あのときが」と思い出すのは「曙VSボブ・サップ」です。一年後に、「投票結果の発表イベントがテレビ中継された一年前が……」と、同じニュアンスで語られないと誰が断言できるでしょうか。