『運命の日』

映画『アンタッチャブル』よりも前の時代。ロシア革命の衝撃は大西洋を越えてアメリカに渡り、価値観と秩序が揺らいでいます。

デニス・ルヘインの『運命の日』は、ボストンで起きた警官のストライキと、それに伴う暴動を扱いながら、二人の青年の姿を通して家族の尊さを描いています。

この物語で、状況をより悪化させるのは“自己憐憫”です。それを人の持つ弱さだと諦めるには、その結果はあまりに悲惨です。

その“自己憐憫”に囚われた偉い人々が栄達を手にする結末は皮肉です。しかし、そこから自由になった二人の青年が手にした幸せは、社会的な栄耀とは無縁で、ささやかであるからこそ貴重です。

誠実に生きるとは如何なる姿勢を云うのか。それを問いかける作品です。

運命の日(上)〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

運命の日(上)〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕