『運命の日』
映画『アンタッチャブル』よりも前の時代。ロシア革命の衝撃は大西洋を越えてアメリカに渡り、価値観と秩序が揺らいでいます。
デニス・ルヘインの『運命の日』は、ボストンで起きた警官のストライキと、それに伴う暴動を扱いながら、二人の青年の姿を通して家族の尊さを描いています。
この物語で、状況をより悪化させるのは“自己憐憫”です。それを人の持つ弱さだと諦めるには、その結果はあまりに悲惨です。
その“自己憐憫”に囚われた偉い人々が栄達を手にする結末は皮肉です。しかし、そこから自由になった二人の青年が手にした幸せは、社会的な栄耀とは無縁で、ささやかであるからこそ貴重です。
誠実に生きるとは如何なる姿勢を云うのか。それを問いかける作品です。
- 作者: デニス・ルヘイン,加賀山卓朗
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/03/05
- メディア: 文庫
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