『銃・病原菌・鉄』補遺

『銃・病原菌・鉄』には、新大陸の“発見”について、「ヨーロッパからアメリカへの侵攻という事実があり、では何故、その逆はなかったのか」というテーマがあります。

「ハードボイルド小説とは帝国主義がその本性を隠蔽しえない状況下で生まれた小説形式である。したがって、その作品は作者の思想が右であれ左であれ、帝国主義のある断面を不可避的に描いてしまう。優れたハードボイルド小説とは帝国主義の断面を完膚なきまでに切り裂いてみせた作品」という言葉とともに、船戸与一を思い出しました。

例えば『緑の底の底』は、白人が原住民化した“白いインディオ”が物語の道具立てになっています。“平凡な”日本人青年はネイティブの青年に「白人がインディオに“退化した”」と言ってしまい、怒りとともに糾弾されます。「インディオになることは退化することなのか」と。

『非合法員』も、『山猫の夏』『神話の果て』『伝説なき地』の南米三部作も、『砂のクロニクル』の暦についての序文も思い出しました。

そして、マダカスカルを舞台にした『群狼の島』。『銃・病原菌・鉄』で、マダカスカル島への入植のダイナミックな動きについて相当のページ数が割かれていて、これは読み返さなければと思いながらページを繰りました。

『銃・病原菌・鉄』は、それほど喚起力のある本です。と同時に、船戸与一の凄さ。