作家の言葉

文藝春秋』の三月臨時増刊号「100人の作家の言葉」を読んでいます。

新聞やテレビといった、マスメディアの言説の貧しさに辟易しているので、その埋め合わせをしたいという気持ちから手に取りました。

他人に何かを望んでも、それは私の勝手。その他人の与り知るところではありません。だから、失望もすれば落胆もします。そうならない唯一の手段は、他人に要求しないことです。

プロの作家なら、私が言葉にできないことを表現してくれるのではないか、多くの示唆を与えてくれるのではないか。私は迂闊にも望み、やはり願いは叶いませんでした。

ある作家の言葉に深く頷き、その作家の本が本棚にあることに安堵にも似た満足感を持つ場合もあります。しかし、それは僅かなケースです。

逆に「この程度のことしか考えられないのか、書けないのか」と、その作家の本を手に取ったことすらないことを誇らしく思うこともあれば、「この作家がこんなことを書くのか」と、好きだった作家に幻滅を覚えることもあります。

「この作家の名前は覚えておこう」と思えるのは僅か数名です。

自分にとって受け入れやすい言葉ばかりに耳を傾ける愚を犯すつもりはありません。良薬は口に苦し。真実は往々にして厳しいものです。

一方で、誰にとっても、この体験を咀嚼するにはまだ時間が足りないとも云え、安易な結論に飛びつくことなく、日々を誠実に生きていくしかないとも思います。