日本を愛する異邦の人

初めて読んだカレル・ヴァン・ウォルフレンの著書は『人間を幸福にしない日本というシステム』。著者については何一つ知らず、タイトルに惹かれて手にしました。続いて読んだのは代表作の『日本/権力構造の謎』。

日本で暮らしていれば皮膚感覚で理解して、あらためて考えるという発想すら浮かばないこと。常識という言葉のずっと前。それを系統立てて論じる異邦の人の言葉にニヤリとさせられました。

一方で、時事的なことを題材にした本は「身体に合わせた服を作るのではなく、素晴らしい服(民主主義というシステム)に身体(私たちの思考パターン)の方を合わせろ」と諭す、民主主義というシステムの教科書か取扱説明書のようで、日本の政治の貧しい風景のあれこれを指摘されても魅力を感じませんでした。

そのウォルフレンの最新の著書『日本を追い込む5つの罠』を読んだのは、当然のことながら、何か正解を求めてのことではありません。他国の人は日本をどう見ているのか、異邦の人の視線に興味があったからです。

日本のことだけでなく、欧米各国についても言及されています。“罠”は、日本固有のものではなく、世界中どこの国にも当て嵌まるのです。

新書という分量の制約もあってか、概論の域を出ていません。それでも、まずは大きくざっくりと把握するという点で、現在の混乱というよりも混沌の交通整理の一助になる本です。逆に、この一冊を読んだだけで世の出来事を理解した気になってはいけません。

日本を追い込む5つの罠 (角川oneテーマ)

日本を追い込む5つの罠 (角川oneテーマ)