『破獄』吉村昭
『破獄』は、脱獄を繰り返す囚人と、それを防ごうとする刑務所の看守たちの戦いを、戦中と戦後の社会を遠景に描いています。
船戸与一の「叙事の積み重ねが叙情を凌ぐ」の理想の形の一つと言っても過言ではない作品です。読んでいて、著者の志の高さが伝わってきます。
他人に、一人の人間として接すること。
他人を、一己の人格として遇すること。
そして、それを踏みにじる戦争の無残。
私は、声高に叫ぶ者を信用しません。この作家の坦々と綴る姿勢こそ、現在の私たちに求められるのではないでしょうか。言葉の正確な意味で、読書をしたと感じています。
- 作者: 吉村昭
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1986/12/23
- メディア: 文庫
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