その意気や良し

映画『メジャーリーグ』は再生の物語です。

夫の遺産として球団を受け継いだ女性オーナーには、それを運営する意欲も、愛情もありません。彼女は、チームが弱小で不人気になり、観客動員数が一定の水準まで落ち込むとフランチャイズを移転できるという規約に目をつけ、役立たずの選手を掻き集めます。

それでも、老練な監督に率いられたチームは、まずまずの数字を出し、オーナーの苛々は募ります。

そして、このままでは、来シーズンには再び、更に駄目な選手と入れ替えられてチームを追われると知った選手たちは、優勝することが自分たちが生き延びる唯一の道と奮起します。

そうして迎えた、勝った方が地区優勝を果たしてプレーオフに出場できるという最終試合。

「Wild Thing」が流れ、球場が興奮の坩堝と化す中、抑えのマウンドに向かうチャーリー・シーン。打席には、シーズンを通して苦手にしている強打者。気合一発。自慢の剛速球で三球三振に切って取ります。ガッツポーズとともに叫ぶチャーリー・シーン。観る者も、思わず拳を握ります。

そして、その裏の攻撃。サヨナラのランナー、俊足のウェズリー・スナイプスを二塁に置いて打席に立つのは、膝の故障を抱えながらチームリーダーとして仲間を引っ張ってきたトム・ベレンジャー。自分から監督にサインを送った彼がしたのは……。スタンドを指差す、予告ホームランのポーズ。第一球目にビーンボールで威嚇してくるピッチャー。それに怯むことなく、再び同じポーズを取った彼は、次の球を、何とバントします。膝の故障を知る相手チームは、予告ホームランのポーズもあって二重に裏をかかれました。膝の痛みに耐えて懸命に走るトム・ベレンジャー。間一髪、一塁はセーフ。

……と、その間に、二塁にいたウェズリー・スナイプスが三塁をまわって止まることなくホームへ。セカンドスクイズ。一瞬の遅れの後、一塁手からキャッチャーへ好返球。一瞬の交錯。クロスプレー。タッチをかいくぐり、スナイプスの左足のつま先がホームベースの端を掠めました。驚愕のサヨナラ勝ち。

これもまた、アメリカンドリームを描いた作品です。そして、スポーツを題材にした作品の魅力が凝縮されています。

様々な思惑や都合があっても、いざ試合が始まると、そのよう夾雑物が入り込む余地はなくなります。選手はひたすらにプレーするだけです。

その「Wild Thing」とともに入場する須藤元気。彼が何故、この曲を選び、このパフォーマンスを選んだのか。リングに上がった須藤は、真っ先に対戦相手のバタービーンに駆け寄り、自分の入場パフォーマンスに時間を割く進行プログラムを詫びるかの如くグローブを合わせます。それを受けたバタービーンも気合の入った表情。私は、これだけでお腹いっぱいです。