『U.W.F戦史』

脳裏でフラッシュバックする映像。断片的な記憶が有機的に結びつく快感。『U.W.F戦史』は稀有な読書体験をもたらしてくれます。

著者が門外漢ということで、事実誤認や、読者である私とは違う解釈をしている部分があったりしますが、それは私が自身の中で補正すれば良いことであり、特に気になることはありません。

“歴史書”として位置付けられている本書にあるのは、無味乾燥な事実の羅列ではありません。

中国の歴史において、新王朝が誕生すると、倒した前王朝を否定して自らの正統性をアピールするための歴史書が編まれます。そのような意図もありません。

そこに描かれるのは、強く弱い、気高く汚い、人間くさい魅力に溢れた男たちによる大河ドラマです。同じ時代に、同じ場所に、よくぞあれだけのキャラクターが揃ったものと感動すら覚えます。

翻って現在。二十年後に、現在を舞台としたプロレス界の歴史書が編まれるとして、それは魅力的なものになり得るでしょうか。

U.W.F.戦史3

U.W.F.戦史3