虚無と浪漫

芥川龍之介は、“唯ぼんやりした不安”という言葉を遺して、自ら命を絶ちました。生来の厭世観に加えて、健康の悪化があっての結果と云われています。

「絶望から人はむやみと死ぬものではない」と、やはり自ら命を絶った三島由紀夫は書いています。これは青年期の自殺について書かれた随筆(エッセイとは言いたくないですね)の一部で、その文脈で捉えなければいけませんが、そこは読者の特権。それを承知しつつ、あれこれ考えてしまいます。

芥川の死と、三島の言葉。この二つを如何に有機的に結びつけるか。これは高校生の時からずっと、私の中に居座り続けています。言葉のレトリックを駆使してそれらしい解答を作ることはできますが、自分がそのようなものを必要としていないこともわかっています。

人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫)

人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫)