身に染みた常識が、常識ではない世界。見知らぬ価値観が支配する世界。マジョリティではなく、マイノリティ。
異邦人。
その立場に、二十歳そこそこで身を置いた彼女の胸に去来したものは、何か。
カミュの『異邦人』で、主人公のムルソーは、犯した殺人の動機を「太陽のせい」と言いました。この虚無を越えることは、可能か否か。
私見ですが、ニヒリズムとロマンチシズムは、一枚のコインの表裏です。それらは不可分のものです。
カミュは、作家として、ムルソーに、その虚無を越えさせなかったのでしょうか。それとも、“虚無の向こう側”など無いのでしょうか。