『あ・じゃ・ぱん!』矢作俊彦

正確には、最後の“ん”は、“ん”と“!”を組み合わせた創作文字です。

私は、この作品はこれだけで傑作と呼べるものですが、それだけでは片手落ちだと思います。これに先行した二つの作品を含めて、僭越ながら名付けて、「矢作俊彦版“昭和お伽草紙”三部作」と捉えます。

第一部は『スズキさんの休息と遍歴 またはかくも誇らかなドーシーボーの騎行』(新潮文庫)です。

この作品は、40歳になり、幸せな家庭にも恵まれたスズキさんが、学生運動に身を投じた過去と、そこから遠く離れた現在を、可愛い息子と巡るロードノベルです。



第二部は『ららら科學の子』(文春文庫)です。

学生運動の闘争の中で殺人未遂に問われ、中国に密航し、遠い田舎で30年過ごした後、日本に戻って来た男。彼が見たのは、発展を遂げた見知らぬ日本。そこに暮らす人々も、彼の知っている日本人ではありません。見知らぬ故郷を彷徨う彼は、浦島太郎のようです。

ららら科學の子 (文春文庫)

ららら科學の子 (文春文庫)



そして、『あ・じゃ・ぱん!』(角川文庫)。

この作品は、戦後、東側は社会主義国、西側は民主主義国と、東西に分断された架空の日本を舞台とした作品です。そこにアメリカからやって来たCNNの特派員が見たものは。

あ・じゃ・ぱん!(下) (角川文庫)

あ・じゃ・ぱん!(下) (角川文庫)