整合性の無い私

藤沢周平の小説が大好きですが、熱心な読者からは片手落ちと言われそうです。武家ものが好きで、そちらを熱心に読んでいますが、市井ものはほとんど手に取りません。藤沢周平の筆力があり過ぎて、市井ものは、その喜怒哀楽が生々しく、ちょっと苦手です。もう少し年齢を重ねたら、きっと読みたくなるだろうと、一種の積読のように距離を置いています。

ですが……。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。奢れる人も久しからず、ただひとへに風の前の塵に同じ。」(平家物語

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶ泡沫(うたかた)は、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中の人と住処と、またかくの如し。」(方丈記

藤沢周平の作品の好みの分類からいえば、「平家物語」を好むところですが、「方丈記」の方が私の感性にしっくりきます。

読者とは、斯様に好き勝手を言うものです。