究極のチラリズム

先日いただいたbuhenshaさんからのコメントに、必殺技についての言及がありました。その返信で、必殺技について触れなかったのは、あれこれ連想することがあり過ぎたからでした。

以前、ジャーマンスープレックスについて、アントニオ猪木に絡めて書きました。箇条書きにすると、希少価値として、ジャーマンスープレックス卍固め>延髄斬り、となるという内容です。

猪木のジャーマンスープレックスは幻の域に達するくらい、目にすることがありませんでした。観客が、目の前の試合の結末として想像することが無いほどに。

必殺技と聞いて私が思い出したのは、ジャイアント馬場のランニングネックブリーカードロップでした。猪木のジャーマンスープレックスほど幻ではなく、馬場の極め技として認知されながら、滅多に目にする機会の無い技。馬場の、このチラリズムの計算は、猪木以上にしたたかでした。

buhenshaさんが触れている、仮面ライダーにおけるライダーキック。あるいは、ウルトラマンにおけるスペシウム光線。小賢しい視聴者は、「その必殺技を最初から出せば良いのに」と言いましたが、それはわかりきったことであり、言った人間の株が下がるだけです。激闘を締めくくってこその必殺技。

それらの技に匹敵するのが十六文キックでした。そして、ランニングネックブリーカードロップは……。私にとって、それはウルトラ兄弟大集合でした。特別な回を目にした幸福感。

翻って、現在のプロレスでの必殺技。そのエポックメイキングは、テリー・ゴディパワーボムだというのが、私の考えです。全日本プロレスに、マイケル・ヘイズとのコンビ「フリーバーズ」として初来日した際、「パイルドライバー以上に危険な落とし技」として喧伝され、初披露されました。その後に生まれたプロレス技の大半は、このパワーボムの改良型、亜流です。よりえげつなく……。

もう何年もプロレスを観に会場に足を運ぶということがありませんが、第一試合からメインイベントまで、一日の興行の中で、パワーボム系の技を何回見ることになるのでしょう。そうなったら、それはもう必殺技ではありません。