叫ぶ

“魂”という字は“鬼が云う”と書きます。人の中にある、人間ならざるもの、即ち鬼が声を発する場所。その魂に響いたモノを、人の言葉で表現することなど、不遜です。

言葉は不自由です。あの感動をどのように表現したら良いのでしょうか。あの指揮振りを、歌声を、楽器の音色を、専門的な視点から語ることは、その道のプロにまかせますが、その説明さえも、あの演奏のすべてを伝えることなど不可能です。

クラシックを聴いて、初めて涙が出ました。大きなうねりを迎えて演奏が終了した瞬間、「凄い」と叫びました。そして、力の限りに拍手、拍手、拍手。腕が疲れ、掌が痛くなり、汗がぼたぼたと垂れる中で、まだ拍手。「ブラボー」と叫んで、さらに拍手。

リッカルド・ムーティ指揮の『カルミナ・ブラーナ』。

誇張でなく、一生の思い出です。