迷路

複数の人たちがまとまる最も手っ取り早い方法は、外部に共通の敵を作ることです。ならば、人類が一致団結するためには地球の外、宇宙から異星人が攻めてこなくてはいけないのではないか。

そう空想せざるを得ないくらい、北東アジアの平和と安定を求めて集った「六者協議」は空転し続けます。

困難という言葉ではまだ足りない、出口の見えない迷路。否、そもそも出口があるのか? 

『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』を読んで、その迷路が迷路であることがわかりました。それは逆に言えば、わたしは迷路があることを知らなかったということです。

わたしたちは近現代史についてもっと学ぶべきと言われますが、それは自国の歴史についてです。ならば、他国の歴史についての無知は推して知るべし。

恥ずかしい話ですが、わたしは朝鮮戦争の休戦協定が、北朝鮮アメリカの間で結ばれていることを本書を読んで初めて知りました。北朝鮮と韓国ではないのです。

また、関係者の発言の端々から、北朝鮮における軍の存在の大きさが窺い知れます。独裁者といえども軍部と上手くやっていかなくてはいけないのです。

アメリカが「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」というとき、そこには「軍事的に攻撃するということも含めて」という一文が、書かれてはいなくても厳然としてあります。

これを、朝鮮戦争が終わっておらず、あくまでも休戦状態にあるだけという文脈から読むと、六者協議の混沌の一端が窺い知れます。

それでも、「それでも」と続けなくてはいけません。漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第五部で、殉職した警官は言いました。

「わたしは『結果』だけを求めてはいない。『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ……。近道したとき、真実を見失うかもしれない。やる気も次第に失せていく。大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている。向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は犯人が逃げたとしても、いつかはたどり着くだろう? 向かっているわけだからな……。違うかい?」