続:怖い本

不満を刺激されて熱狂し、他国を侵略することを奪われた権益の回復で当然のことと支持し、状況が悪化すれば政治的指導者の言葉を信じなくなる。

この大衆の主体性の無さを、当時のドイツ国民に限った特性と切り捨てる人はいないでしょう。

半藤一利は、ある著書の中で、先の戦争の教訓として「熱狂するなかれ」と説きます。

アウシュビッツに代表される強制収容所の悲劇を、戦後、ドイツの一般市民は知らなかったと言い、その地獄を生き延びたユダヤ人たちは、「いや、あなたたちは知っていた」と糾弾します。

確かに、戦争に勝利した者が、その後の勢力地図において“正義”であるのでしょう。しかし、人としての尊厳は、また別の話です。

「英雄がいない時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ」と言いますが、たんなる扇動者を英雄ともてはやしてはいけません。

ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書)

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