日常のハードボイルド

探偵小説で、探偵は依頼を受けて人を探し、その道程が物語となります。その人探しを自分の(仕事の)ためにする雑誌編集者を主人公にした“日常のハードボイルド”というコンセプトが秀逸です。

古い特撮作品を扱う雑誌の取材ということで、その人探しのベクトルは過去へ向かいます。そこには事件はありませんが、人に歴史あり、物語があります。

ミステリーではありませんが、最後にひねりの利いたオチがあり、言われてみれば伏線もフェアに提示されていて、決してアイディアに依存しておらず、作家の力量と充実ぶりが行間から溢れています。

おそらく、この作品を最も楽しんでいるのは作家自身でしょう。ならば、読者が楽しくないはずがありません。

追想の探偵

追想の探偵