UWF再び

“あの”柳澤健UWFについて書くと聞いて、多くの人たちは「ついにUWF論の決定版が出る」と胸を躍らせたのではないでしょうか。斯く言うわたしも、その一人です。

連載中から賛否両論、思い入れがある人ほど意見を表明しますので、否の方が多かったかもしれません。著者も、あとがきで、企画が持ち上がったとき、UWFについて書くことに躊躇いがあったことを告白してます。

あれは夢でした。青春の手前、思春期の夢でした。

それを、他人が「これはこうでこうだった」と意味付けることに抵抗を覚えないわけがありません。

この本が提示する格闘技の流れは二つあります。一つは、旧UWFからシューティング(現在の修斗)を経てMMAへというもの。もう一つは、旧UWFから新生UWFを経てMMAへというもの。

前者は佐山聡の、後者は前田日明の物語です。

著者は前田日明新生UWFに辛辣です。本書の最初と最後に登場するのは中井祐樹佐山聡のもとでシューティングを学んだ格闘家です。ここからも、前者を本流と認識していることが窺い知れます。

しかし、著者は、だからといって新生UWFを無視して論を展開することは出来ませんでした。その包含力こそプロレス。

この本は、UWF論の決定版はおろか、議論の叩き台にすらなっていません。ある人は「リトマス試験紙」と評しています。

それでも、読んで良かったと思っています。あの時代に熱い想いを抱いていたなら読むべき本だと確信しています。

もう一歩、踏み込むために。

1984年のUWF

1984年のUWF