恥を晒す

アラブの春」に始まった中東の混乱は収まる気配を見せず、混迷の度を深めています。

そこで、最初の問い。アナタは“中東”とは何か、定義できるでしょうか。私は、本書『<中東>の考え方』を読むまで、そのようなことを考えたこともありませんでした。

そして、その“中東”には(欧米列強による線引きによって生まれた)多くの国があります。つまり、近現代史において、“中東”は国際的なパワーゲームの舞台になっていたということです。では、第二の問い。国境線が引かれただけの白い“中東”地域の地図に、アナタは国名を漏れなく記入することができますか。私はできません。本書を読んでいる最中、冒頭にある地図を何度見返したことか。

外からの力によって国ができたなら、それ以前にはなかったということです。では、その国の国民は自分たちのアイデンティティを何に求めるのでしょうか。国でしょうか、民族でしょうか、宗教でしょうか。

単一の民族が、単一の宗教を持ち、単一の国に暮らすなら、話は単純ですが、“中東”では正反対、いくつもの要素が重なっています。国、宗教、民族。政治的には王制(王政)、共和制、社会主義に民主主義。

私が確認のために何度も読み返したのは、単純に「アラブ=イスラム」ではないという箇所です。イスラム教の国のイランがアラブではないのです。「ユダヤ教の国」であるイスラエルにもアラブ民族の国民がいるのです。

本当に自分の無知と無関心が恥ずかしくなります。しかし、恥を晒しても知った者勝ちです。

本書は、『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』の関連図書と位置付けて読みました。国際政治の矛盾の吹き溜まりの中東を扱った本が、直接にアメリカを描写しないからこそ、その姿を逆照射して浮かび上がらせてくれるのではと思ったからです。

<中東>の考え方 (講談社現代新書)

<中東>の考え方 (講談社現代新書)