家族小説

他人とは、その距離を調節することができます。しかし、そうできないモノがあります。“家族”です。それは、どんなに否定しても、その関係が消え去ることも、なかったことにすることもできません。それが自分に力を与えてくれる誇れるものなら幸せですが、もしそうではなかったら……。

ジョー・ピケット”シリーズ最新作『フリーファイア』で、主人公のジョーは、記憶から消し去ったつもりでいた、家族を(自分を)捨てた軽蔑する父親と再会して心が乱れ、彼が自分と間違われて暴行を受けたことに動揺します。

他人であれば、そのようなことはありません。

愛する家族のために頑張る。それは至極真っ当です。しかし、愛していなくても、自分では愛していないと思っていても、家族は自分の人生の一部であり、その存在は心に対する影響力を持っています。

家族の絆を描いてきた“現代の西部劇”が、より深みを増し始めました。

フリーファイア (講談社文庫)

フリーファイア (講談社文庫)