たしなみ

わたしは、その幸せを手にする資格がありません。何故なら、そのための努力をしていないから。周囲の人たちは、「オマエは充分にやっている」と言ってくれますが、何もしていない自分を再確認するだけです。

森瑤子の小説では、道ならぬ恋に落ちた男女が登場します。その二人は、自分たちの恋が終わる日が来ることを知っています。だからこそ、その日々は輝いたものになります。

不相応な幸せを得た揺り戻しは来ます。必ず。

そのときに醜態を晒さぬよう、心の片隅に覚悟を隠しています。

それが“嗜み”だと思うのです。