ほろ苦い

マルドゥック・ヴェロシティ』を読んで気付いたことがあります。それは、『マルドゥック・スクランブル』のボイルドは“死にたがっていた”ということです。

眠らない男にとって、それは究極の希望だったのでしょう。しかし、虚無に身を任せたボイルドには、自ら命を絶つ、あるいは戦いの中で意図的に殺されるという選択肢はあり得ません。

能力の限り戦って、倒される。そして、その相手は、ウフコックが「俺は、良い相棒(バディ)に巡り会えた」と喜んだ少女。

それは、ボイルドにとって幸せ以外の何物でもなかったと思います。

虚無によって事態を制圧した男が、それを乗り越える意志を持った少女に敗れる。

何ともほろ苦い。