海の向こうの村

村社会は海の向こう、アメリカにもあります。

共通の価値観と了解事項。歴史と権威があればこそ、メジャーリーグも村社会と化し、自分たちの思考回路を疑うことはありません。世界を成り立たせている不文律だからです。

それを否定する異物は排除されなければいけません。村は、居心地が良くてこそ村であり、それを壊そうとする者は敵です。

野球において、バッターなら打率と打点を、ピッチャーなら勝利数や防御率を評価の基準にするのは、わざわざ言うまでもなく当然のことです。

その野球界に、それらをまったく考慮しない人々が参入してきたら。そして、誰もが認めざるを得ないほどの成績を出したら……。

池に投げ込まれた小石と、広がる波紋。

たった一人のユニークな考え方をするゼネラルマネジャーが野球界を席巻するのではありません。その人物が要職に就いて辣腕を発揮するに先立って、様々な人々が野球について新しい視点を発見し、それらが下敷きとなっています。

無数の、無名の人々の存在があってこそのストーリー。それが素晴らしい。

あとがきに、この本に対する、メジャーリーグ村の反発がいくつも紹介されています。変わるというのは怖いものです。しかし、それを躊躇していては淘汰されるだけです。

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

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