陰より始めよ

帚木蓬生の本を二冊。

『蝿の帝国 軍医たちの黙示録』を新聞で目にした瞬間、「読みたい」ではなく「読まなければいけない」と思いました。太平洋戦争の時代、徴兵された軍医たちを描いた短編集です。

『風花病棟』は、「生命の尊厳と日々向き合う“良医たち”の物語」。こちらも短編集です。

『蝿の帝国』を買うために本屋に出かけたところ、文庫になった『風花病棟』が新刊コーナーに並んでいました。

この二冊を併せて購入したのには理由があります。『風花病棟』を手に取ってカバーの粗筋に目を通した時、映画監督の押井守の言葉を思い出しました。

押井守は、近代的な高層建築と古びた街並みを同時に描くことで、その二つが互いに補完しあい、都市を立体的有機的に表現することができると言います。

『蝿の帝国』を陰、『風花病棟』を陽とするなら、その二つの作品を一緒に読むことで同じような効果があるのではないか。

では、どちらから読むか。描かれた時代順なら『蝿の帝国』が先、書かれた順なら『風花病棟』が先になります。あれこれ考える中で、アメリカのテレビドラマ『LOST』を思い出しました。

『LOST』は、謎に満ちた無人島でのサバイバルを描いた群像劇です。そして、要所要所で登場人物たちの過去がフラッシュバックで挿入されます。それによって、謎が謎を呼び、仕掛けはより魅力的になり、物語は広がりと厚みを増します。

その手法を取り入れて、二つの短編集に収録されている物語を交互に読んでみようと思います。『蝿の帝国』の方が話数が多いので、『LOST』とは逆、過去の物語の間に現在の物語が挿入されることになります。

より能動的に読書をするための仕掛けを、読者の立場から自分で作ってみました。どのような効果があるのか、あるいは無いのか。これも、自分への挑戦です。

蝿の帝国―軍医たちの黙示録

蝿の帝国―軍医たちの黙示録

風花病棟 (新潮文庫)

風花病棟 (新潮文庫)