「赤とんぼ」

過日、“イ・ムジチ合奏団”のコンサートに足を運びました。

クラシック音楽の楽曲について詳しくもなければ、専門知識もありません。それでも、その演奏に身も心も震えました。リッカルド・ムーティ以来の感動。音楽って素晴らしい。

映画『ラスト・エンペラー』のテーマソングや、ビバルディの“四季”は耳に馴染みがあり、その美しい調べに酔いしれました。

しかし、そこは素人。私が最も心揺さぶられたのは、アンコールで演奏されたうちの一曲、童謡の「赤とんぼ」でした。

素晴らしい演奏の持つ、聴く者に対する喚起力。

呼び起こされる、“あの頃”の記憶。

一方が先で他方が後ということはありません。それらが渾然一体となり、聴いていて涙が滲みました。

感動の源は経験です。そして、私たちが経験することのほとんどは日常の中にあります。

今日という日を、身近な人を、あだや疎かにはできません。