小説版『ゴルゴ13』

船戸与一は“外浦吾朗”の名前で、漫画『ゴルゴ13』の原作に参加していたことがあります。その中から『落日の死影』『鬼畜の宴』『おろしや間諜伝説』の三編を選び、自ら小説化しました。

映画『梟の城』で、アクションスーパーバイザーの毛利元貞は、大略「首の頚動脈を一太刀で斬ること」を助言したそうです。それは確実な方法であると同時に、相手に不必要な苦痛を与えない、武士としての嗜みでもあります。

ゴルゴ13もまた、たった一発の銃弾で標的となった人物を倒します。それは、単にゴルゴ13の超絶的な技術というだけではなく、作者の、人間に対する諦念をも感じさせます。

この技術と諦念の組み合わせに大藪春彦の影を見ると言ったら、言い過ぎでしょうか。

ゴルゴ13』は“part1”“part2”といった具合に、細かい章立てでストーリーが進んでいきます。それが、意外にも船戸与一の語り口と合っており、違和感なく楽しめました。

今回のノベライズは出版社の企画でしょうが、作家・船戸与一の創作活動にも良い影響を与えるのではないかと感じます。