最大級の賛辞

「1985年。三件の連続殺人事件。被害者は未成年で、名前が前から読んでも後ろから読んでも同じスペルという共通点が。また、三人とも、公共のコミュニティ菜園で発見された。事件は“回文殺人事件”、犯人は“夜の園芸家”と呼ばれた。現場には無骨な老巡査部長と、二人の若い制服警官の姿があった。

そして、2005年。同じ状況で少年の遺体が発見される。捜査にあたるのは、二十年前の事件で現場にいた制服警官の一人、ラモーン刑事。そして、引退した老巡査部長と、既に警察を辞めた、もう一人の制服警官も事件に興味を抱く。」

ジョージ・ペレケーノスの『夜は終わらない』は、“ポケミス”で出版され、他の作品も、ハヤカワ文庫において“ミステリー”に分類されています。

ミステリーの定義は様々ですが、この作家の紡ぐ世界を表現するには足りません。その極上の味わいは、何も高級な食材によって生れるのではありません。

人の心の弱さという闇が覆う街で、誇り高く生きようとする人々がいます。誠実であろうとする人々がいます。変わりたいと願う人々がいます。作者の深い洞察力と丁寧な筆運びが、ありふれた光景や人間模様の中に謳う人間賛歌。

ハメットを始祖とするハードボイルドであり、チャンドラーの系譜に連なるチャンドラリアンの小説であり、警察小説であり、家族小説であり、そして何より、人間の物語です。

文学をミステリーの上位概念と位置付ける気持ちはありません。それでも、私は言いたい。

ペレケーノスの作品は、アメリ現代文学の収穫です。

夜は終わらない (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

夜は終わらない (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)