「自分さえ良ければ」病

リーマンショックと、その後の混乱。その時何があったのかを知りたくて読んだのが、以前記事に書いた小幡績の『すべての経済はバブルに通じる』と、神谷秀樹の『強欲資本主義 ウォール街の自爆』でした。

http://d.hatena.ne.jp/ocelot2009/20100131/1264908682

その当時、その著書が注目されていたのが、経済学者の浜矩子氏でした。私も書店で手に取りましたが、上記の二冊と内容的に重なる部分も多く、そのまま棚に戻してしまいました。

その浜矩子氏の、最新の世界及び経済の情勢を下敷きにした本、『ユニクロ型デフレと国家破産』(文春新書)を読みました。

この本は、現在のデフレが、如何に過去のそれと性質を異にしているかを論じることを主眼としています。

物事は、それだけを抜き出して論じても、その本質は掴めません。関係性という大きな流れ、時間的空間的マトリクスの中で位置づけなければ、見誤ります。その点で、とても親切な構成で、著者の言わんとすることが伝わってくる内容でした。

記事タイトルの“自分さえ良ければ”という風潮が、何度も指摘されます。国単位で、企業単位で、個人単位で。「情けは人のためならず」で、その傲慢はいずれ自分に跳ね返り、相手も巻き込んで共倒れになるのだと、著者は警鐘を鳴らしています。

このように何かを分析し論じる本には、どうしても対象を批判する要素が含まれます。しかし、この本において、浜矩子氏はそこに止まらず、自分なりの提言にページを割いています。それが、惨憺たる世界経済(著者曰く、地球経済)を論じた本ながら、読後感を良くしています。また、それは門外漢の私には到底思いつくものではなく、本を読むことの大切さを再確認できました。いくつになっても、勉強することが多いです。

ユニクロ型デフレと国家破産 (文春新書)

ユニクロ型デフレと国家破産 (文春新書)