実際にやるということ

荒俣宏の『帝都物語』は、東京壊滅を目論む魔人、加藤保憲の暗躍を描いた作品です。その物語に、三島由紀夫が登場します。

作中の三島由紀夫は、「祖国防衛隊」という私兵を要した組織を作り、加藤保憲と対峙します。加藤はその時代時代で立場を変え、その時は自衛隊に属しています。加藤と、まだその正体を知らない三島との会話です。

加藤「どうだ、制服の味は?」

三島「行動の河に初めて触れた快感だ」

思索を実際の行動で表現しようとした三島由紀夫。それを作家の才能の枯渇とする評論家もいます。しかし、そのような評論に意味はありません。

日本の現代史において、“自殺”ではなく“自決”したのは、三島由紀夫ただ一人です。