『ラスト・チャイルド』

ひろさちや、という仏教学者曰く、

「わたしたちがこの世に生きているのは、仏が書かれたシナリオの中で、それぞれがいろんな配役をもらって、その役を演じているのです。それが人生です。仏が書かれた(何億年にもわたる)膨大なシナリオですから、役の意味(や価値の大小)などわかるはずがありません。仏が無意味な配役をこしらえられておられるはずがないから、仏のお考えでは意味があるのです。わたしたちはそれを信じて、ひたすら(仏に)頼まれた配役を演ずればいいのです。」(著書『「狂い」のすすめ』より抜粋)

奇しくも、ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』で、登場人物の一人が「人生は環だ」と言います。

人の死を、連環の中で意味があったのだ、とは言えません。それは、傍観者の戯言か、残された人々の心の平安のための方便に過ぎません。

それでもなお、人は、苦難を乗り越えて生きていきます。それは、良い悪いではありません。命の役目です。その輝きを見せてくれた作品でした。

ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)